名機を鳴らすための防音工事 -リスニングルーム

譲り受けたNS-1000

 音楽の聴き方は生活様式の変化や再生装置の進化によって大きく変わってきました。現在ではスマホからヘッドフォンやイヤホンで聴くという方が多数となっているようですが、今回のお客様は70年代のヤマハの名スピーカーNS-1000を存分に楽しむリスニングルームを作りたい、というご相談から始まりました。
同時代のNS-1000Mがレコーディングスタジオでも数多く使われたのに対して、M(monitor)が抜けたこちらのNS-1000は家庭用高級スピーカーとして販売されました。
 お客様はこのスピーカーを叔父様から譲り受け、大切に使っていましたが、今回1戸建て住居を購入するにあたり、このスピーカーを思い切り楽しめるリスニングルームを作ることになりました。

ヒアリング

 防音工事のプランを検討するにはお客様から十分なヒアリングをすることが大事だと思っています。
今回お客様が使用する音源は、
・オーディオ機器からのリスニング
・ギターアンプを通した演奏
・アップライトピアノの演奏
 この他に使用する時間帯、お部屋内の響きなどを詳しくヒアリングいたしました。
 特に響きに関しては、他社さんから出てきたプランはスタジオのコントロールルーム的に作りこまれていたのですが、そうではなく使いながら好みの響きをご自身で整えていきたいということでした。

和室の防音工事開始

 築20年の木造建築ですが、前所有者が多数のペットを飼っていたためか、あまり良い状態ではありませんでした。お客様は家全体をすべてリフォームして、この6畳の和室をリスニングルームにすることにいたしました。

畳を撤去して、床、天井、押入を解体していきます。

 今回の建物は基礎が布基礎で床下はコンクリートではなく土が露出しています。防音室は大きく荷重がかかるため新たにコンクリートを打って荷重に耐えられるようにします。

 遮音性能を高めた既存間仕切壁の内側に、これと接触しない浮遮音壁を作って行きます。既存間仕切壁と浮遮音壁の間の空気層には吸音材を入れて音の反響を防ぎます。

完成しました!工事期間は約3週間です。
押入れ部分にあった柱は建物の構造上残さざるを得なかったのですが、クロスの色を変えてアクセントになっています。お客様はこの柱周辺を上手に使いブースや収納スペースとして活用しています。

機材搬入~セッティング

大型のNS-1000をメインに3種類のスピーカーをセット。厚地のカーテンや反響板を設置して音響調整しています。
大切な電源関係のご相談も繰り返し行いまして、100Vと200Vの専用回路を新たに引いています。
押入れだったスペースは録音ブースとして利用。
お洒落なストックスペースもあります。

遮音性能

 ご契約時に遮音性能の保証値を設定して契約書に明記します。今回はすべての隣地境界線上でDr-50以上といたしました。これは隣戸内に対してはDr-65以上になると推測されます。都内の建物ですので隣地境界線は近いところだと防音室から1mを切っていましたが、完成後の遮音測定ではすべての測定地点で保証値以上の性能を確認できました。

感動のリスニングルーム

 機材のセッティング、音響調整が整ってきたところで試聴させていただきましたが、今までに経験したことが無いほどの素晴らしい音で席を離れたくなくなるほどでした。自分とお客様の音楽の好みが似ているようで、用意された音源が私もよく聴いているものが多かったのですが、今まで気が付かなかった音が聴こえてくる発見もあり驚きと感動のリスニングルームとなりました。