高層マンションの防音工事

高層マンションのピアノ室です。バルコニーに面した2部屋をつなげて1部屋とし、約12畳の防音室を作りました。

洋室1と洋室2の間のクローゼットを解体して全体を防音室とします。
解体前の洋室1です。右壁上の梁には換気ダクトが入っています。
同じく解体前の洋室2です。L字型に大きく開いたサッシが開放感を与えてくれますので、防音工事後もこの解放感を感じられるようにプランを作ります。

高層マンションの防音工事では注意しなくてはいけない事があります。低層、中層のマンションでは隣戸との戸境壁はコンクリートの躯体ですが、高層マンションの場合、荷重の問題からコンクリートではなく、石膏ボードを積層した乾式壁であることがほとんどです。上の間取り図で言うと、洋室1の上側の斜線の壁がそうです。この乾式壁ですが、コンクリート壁と同等の遮音性能があると謳われていますが、実際に測定してみると、低音の遮音性能がコンクリート壁より劣ります。このため今回はそちら側の遮音壁は空気層を大きく取り、遮音壁もより高い遮音性能を持つ構成といたしました。

防音工事開始です。まずは既存の床、壁、天井を解体してスケルトンの状態にします。この中に浮いた遮音層を作ることによって、空気を揺らして伝わる音、振動で躯体を伝わっていく音を止めることができます。
換気ダクトは遮音性能の高いものに変更します。また、ダクトを囲む梁がなるべく高い位置で納まるようにします。正面の壁が先程の隣戸との戸境壁になります。
並んでいるオレンジの円形のものは防振ゴムです。この上に防振床を作っていきます。この防振ゴムを使った床によってグランドピアノの脚から伝わる振動を吸収します。別のマンションでの体験ですが、この防振床の上で大人がジャンプしても下階の部屋では何も聞こえませんでした。
防振天井と防振浮き壁の間には吸音材をきっちりと入れて音の反響を抑えます。

ちょっと早回しですが、完成です。

解放感のある開口部はそのまま残し、2セットの防音サッシを追加して3重窓としています。出入口は2か所で片方はピアノや大型の家具を搬入しやすいように防音サッシにしています。照明はスポットライト用のダクトレールを縦横に配置し、シーリングも併用して多彩な照明のバリエーションを可能にいたしました。

ピアノや弦楽器の演奏を楽しむご家族ですが、お仲間を呼んで演奏会も開いてみたいとおっしゃっていました。今後がとても楽しみなお部屋となりました。